南部鉄器をはじめ、岩手には何代にもわたって受け継がれてきた「手しごと」がたくさんあります。今回ご紹介するのは、盛岡近郊で親子三代にわたり鉄器づくりを営んできた、ある鋳物工房の三代目の挑戦です。地域の大人図鑑、今回のテーマは「伝統工芸とAI」です。
先代から受け継いだ技術の多くは、言葉ではなく「見て覚える」ものでした。湯の温度、型に流し込むタイミング、冷ますまでの時間——長年の勘に頼ってきた工程が数多くあります。三代目である現在の職人は、その勘を少しずつ言葉に残す取り組みを始めました。作業のたびにスマートフォンで気づいたことを音声メモに残し、AIの文字起こし機能を使ってテキスト化。たまった言葉を月に一度、AIに読み込ませて「よくある判断のポイント」として整理し直しているそうです。
「弟子に教えるとき、感覚だけでは伝わらないことが多かった。言葉にしてみると、自分自身も工程を見直すきっかけになった」と職人は話します。すべてを数値化できるわけではありませんが、言葉として残すことで、次に技術を引き継ぐ人への手がかりが増えていきます。
はじめは半信半疑だったという職人も、数か月続けるうちに変化を感じたといいます。以前は「なんとなく」としか説明できなかった判断が、少しずつ言葉として整理され、若い職人への指導にも使えるようになってきました。もちろん、すべての感覚が言葉になるわけではありません。それでも、残せる部分から少しずつ形にしていく姿勢が、次の世代への贈り物になっていくのだと感じます。
南部鉄器のような伝統工芸は、これまで「守るもの」として語られることが多くありました。けれど今回の取材で見えてきたのは、AIという新しい道具を使いながら、技術を次の世代へ「渡していく」姿勢です。手しごとの温もりと、デジタルの仕組みが交わる場所に、地域のものづくりの新しい形がありました。
これからも、ミライタウンでは岩手で挑戦を続ける方々の姿をお届けしていきます。
👉 LINEで友だち追加 してミライタウンの最新情報をお届けします!